猫が星見た

映画の感想

王妃の紋章(満城尽帯黄金甲)

唐王朝滅亡後の中国。絶対権力をほしいままにする国王を頂点とする“黄金の一族”がいた。国の繁栄と王家の栄華は永遠かと思われたが、宮廷内部では誰もが秘密を抱え、悪意に満ちた策謀が複雑に入り乱れていた。すでに冷え切っていた王と王妃。王は病気がちな王妃を気づかうふりをして薬と称した毒を与え続ける。一方、皇太子はそんな王妃との不倫を解消できずに苦悩する。王に武力を見込まれる第二王子は、久々に再会した王妃の衰弱ぶりに心を痛める。さらに、唯一汚れを知らず無邪気な存在と思われた第三王子の心にも深い闇が広がる。

世間の評判がすこぶる悪いこの作品ですが、途中まではかなり面白いです。
なんでかっていうとコン・リーが素晴らしいから。
やっぱりこの人美しいです。人間の醜い部分ですら美しくみせてしまう。チャン・ツィイー辺りがこの役をやると単なるヒステリックな女王様、あー綺麗なオベベ着て可愛いねえ、で終わると思うんですが、コン・リーは違う。骨太の美しさ、人間の強さ、圧倒的な存在感があって、この人の演技を観るといつも「なんて人間は美しいんだろう」と思う。かつ母性愛が溢れ出ていてこの映画にはぴったりだったと思います。動と静を両方持っている稀な女優さん。
んで、途中まではコン・リーの心情を追ってストーリーが進んでいくので非常に見ごたえがあって「あ、久々にチャン・イーモウの良作かも」と思ったのもつかの間、オチがものすごい雑でした。
(以下ネタバレあり)









正直言ってそれはいらんやろ!三男の謀反。
無駄に三男の不吉な顔が映り始めた辺りから嫌な予感はしてましたけど、なんでチャン・イーモウはストーリーを無駄に複雑にしようとしていつも失敗するのか!普通にいったらええですやん!途中から絡んでくるキャラクターも増えてきて散漫になりだして収集つかなくなったら大人数でワイヤーアクションでボーン!!!
そんで戦闘が異常に長いんですわ。人数多くてスケールでかいけど、メリハリなくてすぐ飽きる。あんたはいつから三流アクション映画監督になったんや!!!昔は農村ドラマ専門やったやないかー!!しまいに風呂敷広げすぎてどうしようもなくなって〆がジェイ・チョウの歌ですわ。歌はええ曲やけど映画と全然あっとらん。コン・リーの素晴らしい悲鳴が台無し。そのセンス、山田洋二のセンスに似たり。

衣装・美術は本当に素晴らしかった。これだけでも映画館で観た甲斐があるのは確か。
しかしチャン・イーモウってかなりの俗物やなーと思った作品でした。既に映像作家ではない。大衆娯楽映画監督である。あと、ユンファは頑張っていたのだが、彼の悪役はあまり観たくない。
(映画館で・2008年4月23日)