猫が星見た

映画の感想

太陽(THE SUN)

1945年8月。疎開した皇后や皇太子らとも離れ、地下の待避壕か唯一残った研究所での生活を送る天皇。敗戦が決定的となる中、御前会議では陸軍大臣が本土決戦の用意あり、と息巻く。それに対して国民に平和を、と願う天皇は降伏を示唆する。空襲の悪夢にうなされ、皇后と皇太子の写真を優しく見つめる天皇。やがて、連合国占領軍総司令官ダグラス・マッカーサーとの会見の日がやってくる…。


もしこれと同じ内容のものを日本がつくっていたなら鉄板で星5つつけるのだが、俳優以外はあまり日本は関係していないので星4つ。
正直、ソクーロフ監督がどれほど下調べしてこの映画をつくり、どれほどこの物語が真実なのか、微妙な気がする。そう疑う程映画の雰囲気が軽い。日本人にとってのタブーである昭和天皇という存在をこれほど軽く描いていいのだろうか、いやいや軽いから重い腰を上げて見る気になるのだが……と複雑な心境。
その欠点を補ってるのが、イッセー尾形の怪演ともいえる快演。私は個人的にイッセー尾形のジメジメした雰囲気が苦手なんだけど、やっぱし演技がびっくりするほどうまいんだよなあ。すごくコミカルな天皇に描かれているんだが、こんなわけないって!と疑うより、“昭和天皇ってこんな人だったんだな”と思わせてしまう。イヤなんだけど見入ってしまう。
ソクーロフ監督は映像作家と言われるだけあって、映像は美しかった。戦時中の惨さを感じるというよりは、幻想的な別世界を描いていた。ま、そういう点も見やすくあるが、実際はこんな綺麗事ではなかったろう。
(2008年8月5日・WOWOWで)

太陽 [DVD]

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