猫が星見た

映画の感想

街のあかり(LAITAKAUPUNGIN VALOT)

フィンランドヘルシンキ。警備会社に夜警として勤務する純朴な男、コイスティネン。仕事を終え、夜明けの中をソーセージ屋に立ち寄って帰るだけの毎日。不器用な性格ゆえか、同僚からも疎まれ、恋人はおろか友人すらもいない、文字どおり孤独な日々。ある日、そんな彼の前にミルヤという名の美女が現われる。生まれて初めて恋に落ちたコイスティネン。彼女がマフィアの情婦だなどと気づくわけもなく、やがていいように担がれた末、宝石強盗の濡れ衣を着せられてしまうのだった。


どうも私の中でのカウリスマキブームが終わってしまったらしいと決定付ける作品。
とにかくわざとらしさが鼻についてしかたなかった。こんなに過剰に惨めさを演出していたっけなあ、カウリスマキって。
今までの作品の登場人物って不幸だけど別にヘタレではなかったんだよな。だから希望を捨てない姿が嬉しいしラストの希望の光を心底喜べるのだが、この主人公・コイスティネンは自分の嘘の姿をソーセージ屋の女に言って虚勢を張ってるなんだか情けない奴で、いちいち“今日は恋人とデートだったんだ”とか自分は寂しい奴じゃない演出をしている所が素朴でなくてすごく嫌だ。かまってちゃんなのだよね。まあそういう所がかわいいと思う人もいるだろうが、私は無理だ。
そのわりに純情を貫いてしまう所がすごくバカに見える。こいつアホだな、と主人公を暖かい目で見ることができないのでマフィアにボコボコにやられても全くなんの感情も沸かない。
また、子供が“警備員のおっちゃんが大変なことになってる”と言ったわりに、大した怪我じゃないような様子がちぐはぐだった。鼻血でてるくらいで“こんなところでは死なない”って言われたって……どうすりゃいいの。

うーむ、なんというか非常にバランスの悪い作品だと思ったなあ。情けなさと純粋さを強調しすぎたために、全く薄っぺらくなってしまっていたといいいましょうか。
今までのカウリスマキ作品はほんと、微妙なバランスの上に成り立ってたんだな、と。
(2008年8月10日・WOWOWで)

街のあかり [DVD]

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