猫が星見た

映画の感想

チェンジリング(CHANGELING)

1928年、ロサンゼルス。シングルマザーのクリスティン・コリンズは、9歳の息子ウォルターを女手一つで育てる傍ら電話会社に勤め、せわしない日々を送っていた。そんな彼女はある日、休暇を返上してウォルターをひとり家に残したまま出勤する羽目に。やがて夕方、彼女が急いで帰宅すると、ウォルターは忽然と姿を消していた。警察に通報し、翌日から捜査が始まる一方、自らも懸命に息子の消息を探るクリスティン。しかし、有力な手掛かりが何一つ掴めず、非情で虚しい時間がただ過ぎていくばかり。それから5ヶ月後、ウォルターがイリノイ州で見つかったという朗報が入る。そして、ロス市警の大仰な演出によって報道陣も集まる中、再会の喜びを噛みしめながら列車で帰ってくる我が子を駅に出迎えるクリスティン。だが、列車から降りてきたのは、ウォルターとは別人の全く見知らぬ少年だった…。


ネタバレ注意






映画通の同僚がベタ褒めだったので、鼻息荒く観てきました。
確かに力作だと思います。140分を長く感じさせない。アンジーも熱演。
でも甘くつけても4つ星を超えない……気がするんですが。
最初の30分くらいは凄くのめりこんで観ていました。クリスティンの生活が細かく描かれていて、性格も端的に表していて、魅力的なシングル・ワーキング・ウーマンで、そこで突然起こる事件。その後に息子が見つかって駅に迎えに行くところ、息子が別人であると分かったときのアンジーの絶望の顔、あそこまでの怒涛の展開は本当に凄い。20分か30分かそこらでクリスティンの息子への愛が深いことになんら疑問を抱かせない。だから観客もアンジーと一緒に絶望するわけです、これは息子じゃない……!と。たった30分かそこらでそこまで引寄せてしまう。
でもその後、精神病院に入れられてからがかなり予定調和で私は拍子抜けしました。
実話なのでそんなこと言っちゃいかんのでしょうが、精神病院の食堂でマトモな理解者がアンジーに声かけた瞬間私はサーっと冷めてしまいました。本当の話なんでしょうけど、これってすごくよくあるパターンではないですか?あと正義感あふれる弁護士が現れるところとか。
せめてマトモな元娼婦が、電気流された後本当におかしくなってしまった……くらいの残酷さというか突き放しが欲しかったです。観客に対して、かなり容赦しすぎな気がしました。
それまでピリっと胃が痛いくらいひきしまってたのがいきなり安心モードになってしまいました。絶対そこまで悲惨な結末ではないんだろうな、と即効思いました。1時間以内に大まかな結末がわかってしまうという、それはいくら力作でも永遠に心に残る映画とは違うんではないかと。
イーストウッド映画の素晴らしい所は骨太でうそ臭くないところ、ダメなところは客観的で淡々としてるところ。整いすぎててあまりとげとげしていない、というかいびつじゃない、というか。不安定さがなさすぎて私にはちょっと物足りませんでした。