猫が星見た

映画の感想

呉清源 極みの棋譜

昭和3年、北京で囲碁の天才少年と騒がれた呉清源は、棋士・瀬越憲作の尽力で14歳で母と兄と共に来日を果たす。世界最高レベルといわれた日本囲碁界でも実力を遺憾なく発揮して、瞬く間にトップ棋士へと成長する。やがて日本人女性、中原和子と結婚した清源だったが、戦争が彼の人生にも暗い影を落とし始める。それでも美しき囲碁の真髄を極めようとひたむきに打ち込む清源は、次第に自分だけの孤独の世界に深く沈み込んでいく…。

なんと、上本町チャン・チェンがやって来ました。第3回おおさかシネマフェスティバルのイベント「チャン・チェンとの夕べ」。
来てくれてとっても嬉しいけど、関西のファン皆なんで上本町?って思ってたと思います。来日があんまり知られていなかったのか、とても人が少なくちょっと彼に悪い気がしました。雲の上の国際的俳優がわざわざ上本町に来たんだぜえ、ほんと。チャン・チェンと上本町を知っている人にとってはそのギャップに驚くはずです。値段も1500円だったので私は「チャン・チェンが急に来られなくなっても当然だよね」くらいの気持ちでいましたが、本当に下手から出てきました。
落ち着いた佇まい!弾ける笑顔!
この人は芸能人っぽいわざとらしさがなくてすごく心地よい人だなあ。あと不思議なオーラがある。映画俳優の雰囲気と貫禄充分の人。ファンの人が質問コーナーで「結婚してください」って言っていたら顔を手で覆って照れ笑いしてました。かわいらしくもある。いや、確かにこんな人が一生傍にいてくれたらどんだけ幸せか。


さて、ずっと観たかった「呉清源 極みの棋譜」ですが、期待通りの良作です。多分、呉清源の伝記を期待している人にとっては物足りない映画だと思うんですが、田荘荘監督の映画を観たい人にとっては期待通りの美しい世界が広がっています。重苦しさを排除して、淡々と時間が風景が流れていく。冬の風景の美しさは何ともいえません。人が歩いてるシーンが他の映画に比べて多いんですが、それでも間がもつ。スクリーンで絶えうる退屈なシーンの美しさがあります。チャン・イーモウチェン・カイコーが娯楽作に走っても、この監督だけは映像作家としてのスタンスを変えていないことにホッとします。ストーリー自体は実際そんなインパクトがありませんが、細部まで行き届いた映像の美しさ、キャストの妙、映画を観て心落ち着いたのは久々でした。
(2008年3月2日・大阪国際交流センターにて)