猫が星見た

映画の感想

金の国 水の国

岩本ナオ原作漫画の映画化。隣り合う2つの国アルハミトとバイカリは長年戦争を繰り返し対立している。アルハミトは資源に乏しいが商業都市として発達し、バイカリは水が豊かだが貧しい。そんな中、両国の友好のために互いの国から嫁婿を送り婚姻が結ばれるが・・・

原作未読です。

つくづく最近の映画(漫画)って丸いですよね。無難というかなんというか、印象に残る部分がなくてうわべだけのおキレイな感じで私は全然感動しません。この作品は世間では評価いいみたいなので、私はもう映画老害となってしまっている自覚はあるのですが、いやいやこれはさすがに全然魅力ないですよと声を大にしていいたいです。

2時間ちゃんとあるのに、登場人物の心の動きとか、展開とかはすごくあっさり感じて、あれ?でも2時間もあるんだよな〜全然深さが物足りないんですけど、と思ってしまいました。主人公2人の恋愛模様もそうですし、左大臣がいきなりやる気出すところとか王様の改心とかね、絵本のように単純なんですよ。絵本の方が深い気もするんで、これは映画の作り手の能力の低さだと断言できます。創作にはイマジネーションが大事と思われがちで、近年の邦画はそれを重視しているような気がしますけど、それより職人的な部分の方が重要だと私は思いますね。緻密な考えの土台の上にイマジネーションがあることで素晴らしい作品ができると思っています。

観る側の勝手な願いですけど、もっと本気で映画を作ってほしい。ただ、この映画が高評価ということは、観る側の能力も低下の一途をたどっていますけど。

 

 

 

ハリー・ポッターと賢者の石(Harry Potter and the Philosopher's Stone)

全世界が知ってるあのハリー・ポッターのお話

テレビで初放映された時に1時間くらい観てどうしてもこの世界にハマれずに完走できなかった私です。でもやっぱり最後まで観とくかと思い今回勇気を振り絞ってアマプラで鑑賞。20年ぶり2度目。

正統派のファンタジーで正統派の児童文学です。驚くほど正統派。原作未読なのでどこまで忠実なのかは分かりませんが。公開当時は大人の方が夢中になっていたような気もしますが、やっぱりどう観ても内容は子供向けで、というか製作側は子供に楽しんでほしいという熱い想いで作っているなという感じがしました。私に平均的な家庭があって可愛い子供がいたら一緒に観たら楽しいだろうな〜と思う作品です。ただ私には子供はいませんし、優等生の映画が心底苦手なので、第二弾以降は観る気しないな〜ということです。すごく寒々しいこと申しますと、この映画は幸せな人たちのための映画だなと思いました。てかこの単純な話で2時間半は長いよ。

 

 

 

オリエント急行殺人事件(Murder on the Orient Express)

トルコ発フランス行き豪華列車オリエント急行。列車は大雪による脱線事故で立ち往生となる。その混乱の中で、一等席の乗客ラチェットが不可思議な刺殺体で発見される。偶然にもオリエント急行に乗り合わせたエルキュール・ポアロは、その謎を解きあかそうとするが・・・

ポアロです。ポアロに思い入れのない私の感想です。

つまらなくはない、でもなんかちょっとなーと思ってしまうのは、結末の部分があまりに叙情的すぎて個人的に好きじゃないからです。あと、結局なんのトリックもないっていう謎解きだからです。なので、原作がいまいちってことですかね笑。アガサファンに怒られそうですけど。本当にこれは好みかなと思います。個人的には一流の正義と一流の悪で対決してほしいんですよね、推理物は。あと謎解きの演出としては、常にスピードがありすぎて、観客が推理する暇がないのがイマイチでした。

アメリカ映画ですが、ちゃんとヨーロッパの香りがしているのが好感が持てました。役者も巧者ばかりなのがよかったと思います。

 

 

 

デリシュ!(Delicieux)

公爵に仕える料理人のマンスロンは、ジャガイモを使った創作料理デリシュを出したことで追放され、実家で旅籠を営むことに。そこへ謎の女性が弟子にしてくれと頼みこんで来るが・・・

タイトルとあらすじを見ると、料理ものなのかなと思いきや、実は中年のラブストーリーなんですよね〜・・・。田舎臭いおじさんと、微妙な顔のおばさんのラブストーリーなんですよね〜・・・。

料理ものじゃないんだと気付いてからがっかりしちゃって薄目で観ていました。面白くなくはないです。時間も短いですし、ストーリーが破綻しているということもない。でも私はこういうの観たかったわけじゃないんだよな〜という気持ちが強すぎて強すぎて。「宮廷」「料理」から想像してはいけない映画です。フランス革命前の話でちょっとした歴史的要素もありますが、まあやっぱり最終的には中年のラブストーリーです。中年の真面目なキスシーンはどう頑張っても美しくないのでやめていただきたい。あとタイトルに!をつけないでいただきたい、そういう映画じゃないから。

 

 

デリシュ!

デリシュ!

  • グレゴリー・ガドゥボワ
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王の願い ハングルの始まり(나랏말싸미)

自国語を書き表す文字がなかった時代の朝鮮。世宗国王は庶民でも読み書きができる簡易な文字をつくりだそうとする。

あんまり面白くなかったです。

朝鮮王朝がなぜ仏教を排除し儒教を取り入れたのか、その背景は全く描かれていないわりに、後半はその歴史的背景や政治・宗教闘争の部分に重きが置かれているので、知識のない私はいまいち物語に入り込めませんでしたし、いまいち物語の焦点もブレている気がしました。表音文字についての考察なのか、王の苦悩なのか、単純に権力闘争や王宮物なのか、いったい何の話だったんかな〜と思ってしまいました。

ハングルをつくった世宗王は偉大な名君だったんでしょうね、くらいの感想です。その反面、ブレーンとなるシンミ和尚がすごく傲慢で不快な感じで、これはこの演技でいいのか?と疑問でした。

近年の韓国映画にしてはめちゃ地味な映画で、正直見応えはありません。

 

 

 

女王陛下のお気に入り(The Favourite)

孤独な女王陛下の寵愛を競う2人の女官のお話

期待はずれでした。

まず、宮廷物で女性が美しくないというのは心底がっかりする私です。顔が微妙というのはありますけど、それ以上に衣装とかも凝っているのに全然美しく感じませんでした。女王陛下は醜い女性という設定ですからあれですけど、女官もどうも美しくないんですよね。レイチェル・ワイズって私結構好きだったんですが、あえての魅力ゼロな感じに演出されていて、監督は女性がとにかく嫌いなんだなきっと、と思いました。憎悪や嫉妬、欲望の中にも女性の美しさを描き出そうとすればできるはずですが、それらが皆無。とにかく醜くて、ただ醜いという。

女王陛下の部屋から戻る廊下で、計略に失敗したエマ・ストーンがShitを連発するシーンがありますけど、なんかモヤっと微妙な気持ちになりました。歴史物・文芸物のような雰囲気を漂わせつつ、そういうところで雑で安っぽさがあるのが不愉快でした。美しさを排除したならストーリーの演出を頑張ってほしかったですけど、権力争いの部分も平々凡々でしたしね。残念ながら2時間浪費した、って感じです。

 

グランド・ブダペスト・ホテル(The Grand Budapest Hotel)

1985 年、とある作家が書斎で語り始める。古びてくすんだグランド・ブダペスト・ホテルでオーナーのゼロ・ムスタファ氏から聞いた、かつて華やかだったこのホテルでロビーボーイとして働いた自身と伝説のコンシェルジュ、グスタヴ・Hの話を・・・

手間を惜しんでいない映画は間違いなく面白いです。

美術のこだわりもそうだし、人物造形もよく考えられていて、師弟のかけあいが軽妙なコメディでありつつ叙情的な要素もあるところがにくいなと思いました。

スマートなスピード感で人物が登場し退場する、舞台をみているような感じで本当に楽しめました。

ずっと観たかった映画で期待値も高かったですが、それを裏切らない傑作です。