稀代の暴君とその寵愛をうけた美しき男芸人と苦楽を共にしてきた相方の男を巡る運命と愛憎の歴史劇。
美貌の男芸人役のイ・ジュンギの妖艶な色気のせいで、見かけだけのミーハー韓流だろうと思って期待しておりませんでしたが、映画として非常にきっちり丁寧に作ってあったので、同性愛を扱っているわりにはそれほど下世話な目線で観ないで済む作品になっています。芸人+同性愛とくるとチェン・カイコー監督の「さらば、わが愛 覇王別姫」をすかさず思い出しますが、そこまで胸を締め付けられるようなシリアスさはこの作品は持っておりません。あれは芸に生きるあまり男が女になり、役のままに男を愛してしまうのですが、この「王の男」は優しくしてもらった子犬がボス犬になついてしまった、その程度ではないでしょうか。まあ庶民的な旅芸人の設定ですし、逆にそういう軽い設定のおかげで、肩凝らずに観る事が出来ます。唐突に思えたエピソード、盲人の演技や筆跡の伏線もクライマックスで綺麗に回収していて、映画としてすごく安心して観ていられました。
ラストは悲惨な結末が待っているのかと思いきや、予想を気持ちよく裏切って心地よいカタルシスを得ることが出来ます。ラストシーンがダントツにいいです。これだけでも観てよかったかなと思わせます。「王の男」、単純なタイトルやなと最初は思いましたが、ラストを観るとなるほどね、いいタイトルだと思います。
(WOWOWで・2007年12月24日)
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