猫が星見た

映画の感想

涙そうそう

同監督の泣かせ系「いま、会いにゆきます」がちっともツボに入らなかったので、タイトルからして泣かせ系以外ありえないこの作品も絶対ツボをはずすだろうと全然期待していなかったが、見事に泣かされた。ミエミエの泣かせ系のいやらしさを感じることなく泣けた。不思議だ。
神経が過敏になっていたのか、洋太郎(妻夫木)がだまされるところとか、けいこちゃん(麻生)が父親(橋爪)の勝手な行動に対して洋太郎に謝りにきたけど彼は謝罪を拒否して別れが決定的になるところとか、制作側が意図した泣きどころではない部分で、社会の汚さとか複雑さとか、ちょっとしたことで人と決裂してもう二度と戻らないこととか、自分から人を拒否する悲しさとか愚かさとかが、劇中では凄くソフトに描かれているのにも関わらず、異常なまでに切実に私の現実の身に迫ってきて辛くて泣けた。ザ・泣き所としては、おばあの「悲しい時は泣いていいさ」。それまでややしつこめに出てきた“鼻をつまんで泣くのを我慢する兄妹”がうまく効いた泣かせだったと思う。
しかしこの映画にはものすごい欠点があって、それはオチ。血の繋がらない兄妹間の微妙な恋心について描いていたはずなのにそれを解決せずにいきなりあのオチはないよなと思う。え?マジで?と画面に向かって思わず言ったくらい。人生も恋愛ものほほんとした雰囲気で描いていたからラストもソフトなところに落ち着くと勝手に思い込んでいた。まあ私はこのラストでも涙腺が緩んだので作戦にまんまとひっかかったわけだけれど、この映画を腹立たしいと思う人はこのラストが原因ではないかなと思う。泣かせとしては一番考えなしで卑怯な手である。
妻夫木君は本人のイメージと同じような役柄で、違和感はないかわりに意外性もなかった。逆に長澤まさみに初めて瑞々しさを感じていいなと思った。あと、船越、悪い奴ー。
WOWOWで・2007年7月22日)