猫が星見た

映画の感想

デリシュ!(Delicieux)

公爵に仕える料理人のマンスロンは、ジャガイモを使った創作料理デリシュを出したことで追放され、実家で旅籠を営むことに。そこへ謎の女性が弟子にしてくれと頼みこんで来るが・・・

タイトルとあらすじを見ると、料理ものなのかなと思いきや、実は中年のラブストーリーなんですよね〜・・・。田舎臭いおじさんと、微妙な顔のおばさんのラブストーリーなんですよね〜・・・。

料理ものじゃないんだと気付いてからがっかりしちゃって薄目で観ていました。面白くなくはないです。時間も短いですし、ストーリーが破綻しているということもない。でも私はこういうの観たかったわけじゃないんだよな〜という気持ちが強すぎて強すぎて。「宮廷」「料理」から想像してはいけない映画です。フランス革命前の話でちょっとした歴史的要素もありますが、まあやっぱり最終的には中年のラブストーリーです。中年の真面目なキスシーンはどう頑張っても美しくないのでやめていただきたい。あとタイトルに!をつけないでいただきたい、そういう映画じゃないから。

 

 

デリシュ!

デリシュ!

  • グレゴリー・ガドゥボワ
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王の願い ハングルの始まり(나랏말싸미)

自国語を書き表す文字がなかった時代の朝鮮。世宗国王は庶民でも読み書きができる簡易な文字をつくりだそうとする。

あんまり面白くなかったです。

朝鮮王朝がなぜ仏教を排除し儒教を取り入れたのか、その背景は全く描かれていないわりに、後半はその歴史的背景や政治・宗教闘争の部分に重きが置かれているので、知識のない私はいまいち物語に入り込めませんでしたし、いまいち物語の焦点もブレている気がしました。表音文字についての考察なのか、王の苦悩なのか、単純に権力闘争や王宮物なのか、いったい何の話だったんかな〜と思ってしまいました。

ハングルをつくった世宗王は偉大な名君だったんでしょうね、くらいの感想です。その反面、ブレーンとなるシンミ和尚がすごく傲慢で不快な感じで、これはこの演技でいいのか?と疑問でした。

近年の韓国映画にしてはめちゃ地味な映画で、正直見応えはありません。

 

 

 

女王陛下のお気に入り(The Favourite)

孤独な女王陛下の寵愛を競う2人の女官のお話

期待はずれでした。

まず、宮廷物で女性が美しくないというのは心底がっかりする私です。顔が微妙というのはありますけど、それ以上に衣装とかも凝っているのに全然美しく感じませんでした。女王陛下は醜い女性という設定ですからあれですけど、女官もどうも美しくないんですよね。レイチェル・ワイズって私結構好きだったんですが、あえての魅力ゼロな感じに演出されていて、監督は女性がとにかく嫌いなんだなきっと、と思いました。憎悪や嫉妬、欲望の中にも女性の美しさを描き出そうとすればできるはずですが、それらが皆無。とにかく醜くて、ただ醜いという。

女王陛下の部屋から戻る廊下で、計略に失敗したエマ・ストーンがShitを連発するシーンがありますけど、なんかモヤっと微妙な気持ちになりました。歴史物・文芸物のような雰囲気を漂わせつつ、そういうところで雑で安っぽさがあるのが不愉快でした。美しさを排除したならストーリーの演出を頑張ってほしかったですけど、権力争いの部分も平々凡々でしたしね。残念ながら2時間浪費した、って感じです。

 

グランド・ブダペスト・ホテル(The Grand Budapest Hotel)

1985 年、とある作家が書斎で語り始める。古びてくすんだグランド・ブダペスト・ホテルでオーナーのゼロ・ムスタファ氏から聞いた、かつて華やかだったこのホテルでロビーボーイとして働いた自身と伝説のコンシェルジュ、グスタヴ・Hの話を・・・

手間を惜しんでいない映画は間違いなく面白いです。

美術のこだわりもそうだし、人物造形もよく考えられていて、師弟のかけあいが軽妙なコメディでありつつ叙情的な要素もあるところがにくいなと思いました。

スマートなスピード感で人物が登場し退場する、舞台をみているような感じで本当に楽しめました。

ずっと観たかった映画で期待値も高かったですが、それを裏切らない傑作です。

 

 

 

 

 

イーストサイド・寿司(East Side Sushi)

シングルマザーのファナはメキシコ移民。スタンドでフルーツを売っているが治安の悪化で生活はままならない。そんな中、日本料理店が調理場の従業員を募集しており・・・

ライトに観れる映画を探し求めてのこの作品。まあ別にそこまでライトじゃないんですが、最初から最後まで意外性もなく、フツーに観れます。昔はカリフォルニアロールなんてな〜と思っていましたが、今はなんとも思わないし色々アレンジしているのは正直美味しそう。そして一心に努力する人は美しい。ああお腹減ったわ。

 

イーストサイド・寿司

イーストサイド・寿司

  • ダイアナ・トレス
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スワンソング(Swan Song)

かつてヘアメイクドレッサーとして活躍したパットは今は老人ホーム暮らし。ある日弁護士が彼の元を訪れ、かつての顧客リタの死化粧を依頼をされるが・・・

すんごい鬱な映画でした。独身中年が観ると3/4以上が鬱になる映画だと思います(多分)。

成功しようがしまいが長生きしたくないな、と心底思いました。そして身体が動くまでなんでもいいからずっと働いていようと思いました。家族がなく社会との繋がりがないことがこんなに孤独で憐れまれるのか、残酷なまでに理解できる映画です。

主人公パットの最後の旅は全然晴れやかなものではなく、死に向かって今まで目を背けてきたものに向き合ってその苦しみとともに死んでいくような演出だったので、なんとなくよくある軽妙なロードムービーを装いながら、実はすごく陰気な雰囲気をまとっていて、私には重い映画でした。年々シリアスな話を直視できないな〜と思いつつ、あー自分が死ぬ時は何を思うんだろうとふと思ったら、食欲なくなりました。それくらい主人公のウド・キアは演技うまいです。でも監督には中年を明るい気持ちにさせる映画撮ってほしいです、正直。

 

オートクチュール(Haute couture)

ディオールのアトリエ責任者エステルは、次のコレクション後に引退させられる。そんなある日、エステルは地下鉄でバッグをひったくられる。犯人のジャドは移民で団地暮らし。バッグの中にユダヤの星のネックレスが入っていることを仲間に咎められ、アトリエへ返しに行こうとするが・・・

個人的に嫌いな映画でした。

ジャドに本当に魅力がない。口が悪いとか品がないとかは育ちなんでいいんですけど、根っこから可愛げがなくて、見ているとムカムカしてきます。問題を起こして自己中心的な振る舞いをしてアトリエを飛び出しても、すぐに戻ってくるのを許される。ただ器用な指先を持っているっていうだけで?なんで?フランス人寛容やな〜、というようにみえてしまう演出でした。そうみてしまう自分の性格が悪いだけかもしれないですが、香水速攻で盗んで悪びれず誰にも彼にもつっかかって、でもなぜかうまくいっているという謎の展開はさすがにどうなんだろうと思いました。

オートクチュールをじっくり見るようなアート映画でもなく、退屈な偽母偽娘の人間ドラマでした。