猫が星見た

映画の感想

パンズ・ラビリンス (El laberinto del fauno)

仕立て屋の父親を亡くし、母親は再婚相手の独裁主義の大尉との子どもを妊娠している。オフィーリアは大尉が駐屯する土地への引っ越し途中、妖精に出会い、誘い込まれるように森の奥へと向かうと、そこには迷宮の守護神がいた・・・。

ビジュアルを見て、前から観たいなと思っていた作品。でも前知識はなく、おどろおどろしいファンタジーかな、くらいに思っていました、が、ファンタジーの皮を被った新しいジャンルだったんだと最後に気づいてぞくっとしました。社会派のような、戦争もの、とも言えそうではあるんですが、でもやっぱりそれとは違う新しいものの気がしています。

現実の内戦の話と、御伽話を組み合わせているのは、簡単そうでそうでもないと思いますし、とにかく全体的にいいバランスで作られています。オフィーリアの深層心理や逃避がファンタジーの部分に表されているんだろうな、と段々と観客は気づくのですが、この展開も簡単なようでそうでもない。観客は不思議な世界に入りつつも、非情な現実も見せられていきます。そこで普通のファンタジーと違うのは、現実も厳しいし、空想も厳しい、んです。ファンタジーの中でオフィーリアは救われるのかな、あ、でもなんか救われなさそう、と思っていたところにあのラスト。めちゃくちゃ哀しい虚無感、と同時にこのラストでよかったと思える不思議な結末でした。

すごい好きな作品です。